TIJ Festivalで『Relational Reading』のワークショップ

組織における解のない課題、所謂適応を要する課題と言われているものに対して、どのように取り組んでいくことが出来るのか。
プロラボでは、ここへの一つのアプローチとして、social construction(社会構成/社会構築)の考え方がとても助けになると考えています。特に、social constructionの哲学的スタンスによるリーダーシップを探求するということで、ナラティヴ・アプローチを活用した取り組みもその一環になりますが、ケネス・J・ガーゲンとロネ・ヒエストゥッドと共に書いた『Relational Reading-Practice for Dialogically Based Collaboration-』という本について探究しているところです。

そのガーゲンが社会構成主義の思想と実践を推進するために立ち上げた「タオス研究所」の日本支部のイベントが先日明治大学中野キャンパスで開催され、そこで春のナラティヴ・カーニバルでもコラボレーションした福岡の佐藤衛さんと共に、この『Relational Reading』を題材にしたワークショップを実施してきました。

そもそも、社会構成主義とは?
その本の著者でもあり、social constructionの研究しているガーゲンは、『現実はいつも対話から生まれる-社会構成主義入門』の中で下記のように書いています。

私たちが「現実だ」と思っていることはすべて「社会的に構成されたもの」です。もっとドラマチックに表現するとしたら、そこにいる人たち が、「そうだ」と「合意」して初めて、それは「リアルになる」のです。

つまり、客観的な現実は存在せず、現実は対話から生まれてくるものだと考える、そういう主義ということが出来ます。これは、これまで当たりまえとされてきた本質主義、実証主義という正解があるというスタンスからは、少し離れたところに立っている考え方になります。

『Relational Reading』の内容的には、「関係からはじまる」の第10章や「関係の世界へ」の第5・6章の内容に近いのですが、共著者のロネが演劇をやっていたため、組織のリーダーとしての実践が少し具体的なケースがシナリオと共に書かれているのが特徴です。そして、リーダーを担う人々に対して、どのように「関係に働きかける」のか、どのように「会話を通じた協働的実践」をしていくのか、を問いかけているのが、この本なのです。

この問いに対する正しい正解はありません。
自分たちで対話を通して、自分たちなりの現実を創り出していくしかないのです。

ワークショップでは、このケースシナリオをHow toと捉えずに、このケースを通してどういう意味を著者は伝えようとしているのかを一緒に考えませんか?と投げかけました。
そうすることで、活字から対話が生まれ、対話からそれぞれに意味付けされていく、そんなプロセスを体験することになりました。
まさに、対話を通して言葉にしていく中で、まさに社会構成主義という現実が徐々に見えてくる、そんな感じですね。

私個人としては、改めてナラティヴ・アプローチの眼を通して考えてみることで、9年前に出た和訳では感じ取ることが出来なかったものが見えてきて、とても面白かったです。

社会構成主義は少しとっつきにくいものがありますが、こういった本の面白さは、いかに本と対話していくか。
引き続き、色々な本との対話をしていきたいと考えている今日この頃です。